【国軍をCDMで離脱した元大尉のインタビュー】
3月4日、国軍で初めてCDM(注1)に参加したニトゥタ(Ni Tuta)元大尉とのオンラインインタビューが行われた。このインタビューは数少ない国軍内の情報となる重要なインタビューだ。友人である在日ミャンマー人のSaw Wah Wahさんの協力により日本語に翻訳することができた。
以下、Mratt Kyaw Thu氏によるインタビューを翻訳
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記者:ミジマ(Mizzima)メデイアはこのようにライブ配信したりもしています。CDMに参加し始めた公務員や軍人、警察が見られるようになっています。しかし、軍人が実際に参加しているかどうかは確認できませんでした。今、実際に本人と電話で話し、軍人であることを確認できたのでニトゥタ(Ni Tuta)大尉とライブでインタービューすることにしました。
彼が本当に信用できるかどうか、実際にCDMに参加しているどうかと言うことについて質問させて頂きます。ニトゥタ大尉、こんにちは。
ニトゥタ:こんにちは。
記者:ライブで彼の顔が出せないことをご了承ください。今からニトゥタ大尉とのインタービューが始まります。まず聞きたいのは、軍事クーデターが始まったのは2月1日なのに、なぜ今になってCDMに参加するようになったかについて話してください。
ニトゥタ:今はじめて公表したからです。実は2月1日から参加していたことをミャッチョートゥ氏も知っています。その辺の事情を後でまた話します。軍内部で今の状況に賛成しない人、精神的に苦しみ悩む人がたくさんいます。でも、現在の情勢に賛成できないから今すぐCDMに参加しますとは言える状態ではないです。除隊しますと言って除隊届を出し、すぐに除隊できる訳じゃないです。
記者:なぜそんなに難しいのですか。
ニトゥタ:それは軍の中でコントロールされているからです。軍の家族は軍の敷地内で暮らしています。軍の敷地外への行き来は制限されています。色々な困難があります。
国民に知らせたいことがあります。私たち全員が持っているソーシャルメディアのアカウントは監視されています。特に私のアカウントを含めて、人気のあるアカウントも監視されているので、私たちはメディアに何一つ書くことができません。皆はなぜ私らが何も書かないのかと思っています。皆にはちょっと待ってほしいと伝えたいです。私たちが困難な状況であることを分かってもらいたいです。
記者:今もニトゥタ大尉のように軍の中でCDMに参加したい軍人、そして軍人の家族もいますか。
ニトゥタ:はい、実際に参加したいと思っている人はたくさんいます。しかし、彼らがどこまでできるかは…。リスクが高いです。後で機会があれば説明します。
現在、国民が命の危険や悩みなどで大変な状況なのにぐちを言う訳じゃないですが、軍内部の人も命や人生や財産など全てがかかっています。リスクが高いのです。軍内部の人が軍を辞めるためには時間が必要です。私が初めてのCDM参加者で33日間かかりました。これから公表する人がたくさん出て来るでしょう。
記者:軍人がCDMに参加したいと思っていても家庭の事情があります。例えば、軍の敷地に住んでいるので参加できません。ニトゥタ大尉の場合、ご家族はニトゥタ大尉のCDM参加についてどう思っていますか。
ニトゥタ:正直に言えば、家族には全然相談しなかったです。私たちには子供がいません。もし子供がいたら、参加をためらったでしょう。子供のことを考えないといけないので。妻にも言いませんでした。両親は現役の軍人です。現在も軍の敷地内に住んでいます。でも、彼等にも相談しませんでした。なぜかと言うと、相談すれば、リスクが更に大きくなると思ったからです。それで自分一人で考えて決めたのです。
記者:色々な質問をしましたが、聞き忘れたことがあります。ニトゥタ大尉が本当の軍人であることを証明する証拠は何かありますか。
ニトゥタ:それは、いつものように国営新聞で公表されるのでしょう。その時、私の写真や名前や肩書きなども公表されるでしょう。これから、私の写真、肩書き、情報などを公表する人がいれば、その人は本当の国民ではなく、私に意図的に損害を与える人であることをはっきり分かってほしいです。
軍内部で私がCDMに参加していることを知っている人もいます。2月1日からのCDM参加のことを私の友人たちが証言できます。その時が来るのを待って下さい。私の情報は軍側から公表して来るでしょう。
記者:先日のデモの状況についての話をしたいです。陸軍77師団、33師団、88師団、タウンジーでは55師団、モーラミャインだと22師団などです。それに、海軍と空軍も入って来てデモ隊を制圧するようになっています。過去を見れば、1988年の時、陸軍22は悪名高い軍として有名でした。でもその時は海軍、空軍のことはあまり聞いたことがなかったです。軍内部で何が起きているのか。海軍、空軍まで使用するほど陸軍の力が弱っているのか、どうなっているのか、軍内部でのことを聞かせて下さい。
ニトゥタ:ミャンマー国境で少数民族の武装勢力との紛争も起きています。そのため、すぐに派兵することができないのです。そのため、現在派遣可能な軍隊だけを使っている訳です。私の知っている限りでは、現在デモに参加している地域は230以上もあります。各町、各地区でデモが起きているので、抑えるにはたくさんの力が必要です。たくさんの力を使いたいから、海軍、空軍まで使っているのだと思います。
記者:最初、軍は警察官だけを使っていましたが、途中から軍を使うようになりました。G3、M2のような武器を使ったりもします。デモ隊もスナイパーを怖がったりしています。マンダレーでスナイパーと思われる人を目撃しました。他の町でもスナイパーを使っていると思いますか。そして、どんな武器を使っているのかについても説明して下さい。
ニトゥタ:スナイパーについて説明したいと思います。軍の構成には中隊にも、小隊にもスナイパーが入っています。私たちは所定の武器を使うことになっています。自分専用の武器、コード、銃の番号、自分専用の装備で行きます。例えば、スナイパーがスナイパー専用の武器を、M4専門の兵士がM4武器を、M2専門の兵士がM2武器を持って行くので、スナイパー達も入っていると思います。
記者:軍内部の人たちがCDMを恐れる。そして、CDMに参加する人を止める。軍以外の公務員が参加しないように促す。CDMに参加する医療従事者を逮捕することもあります。教師達も逮捕されています。なぜそんなに医療従事者や教育関係の人たちがCDMに参加することを恐れているのですか。
ニトゥタ:最初に軍は国内の国民に認められたいのです。国民に、そして公務員に認められたいのです。それから国際的な組織、例えば、ASEAN、UNに認められることがとても大事です。軍内部で、今のことは正しい、やるべきことだと信じていないと前へ進めないです。私のような人間が増えると、間違いなく国民はさらに勇気が出て来ます。
先ほど話したように、軍内部に私のような考えを持っている人がたくさんいます。本当にCDMをできるのか、自分の行動や考えが間違っているのか、そこまでCDMに全てをかけるべきか、などと考えている人もたくさんいます。そんな人たちがいると片腕が欠けたようになります。
権力にはその権力を支える柱があります。権力を支える柱がなければ、権力を維持できるはずがないです。ですから、権力を支える柱がとても大事です。権力を支える柱と言うのは軍人、警察、政府の機関、そして、国民一人一人のことです。だから、柱一本一本は貴重で大切です。権力を支える柱が揃ってなければ、間違いなく、権力も無くなります。
記者:軍と関わりの無い人たちの間で話されていることがあります。それは、軍と関わりのある人やお金持ちで軍と手を組んでビジネスをしている人たちが信じているのは、スーチー政権が選挙で票を盗んだり買ったり不正を行なったりしたから、ミンアウンフライン司令官が仕方なくクーデターを起こしたと言っていることです。軍内部では選挙の不正が原因でクーデターが起きたと信じている軍人がいますか。
ニトゥタ:たくさんいます。だからイデオロギーの衝突になっていることもたくさんあります。公務員の中にも政治に関心を持っていない人がたくさんいます。政治のことをよく知らない人が多いのです。彼らは新聞やテレビからの情報を通じて考えるようになります。
現在私がCDMに参加している間、一部の国民のコメントを読みました。本当に私が信用できるのかと。それは、現在の状況から考察したのではなく、軍への個人的な恨みから来た先入観のせいなのでしょう。
同じように、軍内部にも政党や政治のリーダーに対して良く思ってない人もいます。それで選挙に対しての訴えを信じる人もいます。それは本当の話です。
記者:ライブ中にされた質問の中から一部を聞きたいですが、Facebookに2月1日から本名で投稿している軍の医師もいます。ニトゥタ大尉が最初話したように、自分のアカウントが監視されていると言うのは、何がどうのように゙監視されているのですか。
ニトゥタ:私たちは各自の個人アカウントを部隊に知らせないといけないのです。しかし、十万程もあるアカウントを監視することはできません。Facebook上で友達になってないと監視できないこともあります。主に、有名で人気があるアカウントなら監視できるのです。十万ほどのアカウントはモニタリングできないが、人気が高ければ、誰が投稿しているか分かるので、それをモニタリングするのです。私のアカウントはよく知られているので、ソーシャルメディアに書いていること全てが軍に監視されている状態です。
記者:もしCDMに参加するなら軍の家族にとってリスクが高い、その後どうなるか分からないと言いました。ニトゥタ大尉はCDMに参加する一番最初の人と言いましたが、軍内部には民主主義を信じてこっそり賛成する人、はっきり賛成する人たちもいると思います。その人たちに対して軍はどのような扱いをしますか。
ニトゥタ:軍の中で知り合いが100人いるとしても、その100人といつも接している訳じゃないです。大体接するのは会議や講習会の時だけです。その時は私たちは何も言えないのです。軍医でも、軍のエンジニアでも、私たちは自分と関わりのある軍人とFacebook上で友達にならないことが多いです。アカウントが監視されているのでそうしています。友達のつながりをコントロールするという方法で彼らは意思を表すのです。
軍内部ではそのような人がたくさんいます。同じ気持ちを持っている者同士でFacebookで色々話し合うのです。私もたくさん見ました。それらを見るととても勇気がわきます。
自分ひとりでCDMを公表してからよく考えました。他の人が正しく自分だけが間違っているのではないかと。でも、分かっています。軍内部では間接的に感情を表してきたので、自分と同じ考えを持っている人が必ずいるのだと。CDMを考えている人たちにとっても力になるでしょうし、自分にとってもモチベーションになるので、思い切ってCDMに参加したのです。
記者:CDMに参加したアウンパン駐屯の軍をカロー駐屯の軍が逮捕した噂話を聞きましたが、確認はできませんでした。大隊長、中隊長、小隊長など上の方の軍人たちが参加できるように国民側はどのようなサポートをすればいいですか。どのような保証をすれば、軍がCDMに参加できるようになりますか。
ニトゥタ:一番答えたい質問です。軍が参加できるように直接国民ができることはないですが、私達は将来への希望さえあればできるのです。それは、CRPH、または将来の政府がもたらします。これは軍だけのためにではなく、警察のためにも言っているのです。とても大事です。国民も協力してくれると思います。それは軍法のことです。
今の軍法では、除隊したくてもできないです。毎朝7:30の朝礼に欠席したら、上司に反発したら、反乱を起こしたら罰せられます。軍内部ではCDMの話ができません。直ぐに刑務所に入れられます。軍は軍の家族だけで構成されています。家族も一緒に暮らしているため、家族にも影響があるので考えないといけないです。
だから、国民側が勝利したときに国民ができることがあります。それは、軍内部のシステム、そして軍法の不公平さを改善することを保証してくれることです。そうすると、CDMにたくさん参加して来るでしょう。実際に参加したいと思っているのです。しかし、国民側が勝利したとしても、今の軍法のままだと問題は終わらないです。私は脱走兵のままなのです。
もし、一年後に選挙が行われ政権が変わったとしても私の立場は変わらないです。軍法の通り、ずっと脱走兵のままになります。誰が守ってくれるのですか。そんなことを知っていながら私は軍を辞めたのです。今のクーデターが終わったら、軍法を変えてもらうという形が、私たちにとって望ましいです。ほしいのはお金でも、他の何物でもないです。自分の生活は自分でやっていけます。慎ましい生活をしてきたし、生きて行くことはそんなに難しくないです。でも、軍法は私の一生に影響を与えることとなります。政治犯とは違います。政治犯は政権が変わると自然に消えるけど、私たちの場合は、ずっと脱走兵のままなのです。
記者:最近、国民はCRPHを賛成しています。UNにも認められています。このライブをCRPHの方々も見ていると思います。ニトゥタ大尉からCRPHに何か言いたいことがありますか。
ニトゥタ:軍法を改正してほしいです。正義と不義が目の前に現れたとき、自信を持って正義の側に立てるようにです。私の時ほど難しくないように、CDMに参加したい人が簡単に参加できるように改正してほしいです。国にとってとても大事なことです。もしできなかったら、また同じ事が起きたら同じ結果になります。私たちは軍を辞めることができないです。武器を持っている軍と警察が正義の側にいることができない状況です。だから、軍法を公正な軍法に改正することを求めたいです。
記者:ニトゥタ大尉の答えをCRPHの担当者らも視ていると思います。最後にですが、地上でスナイパーや、実弾や催涙弾などの危険を感じながら勇ましく戦っている若者がたくさんいます。その若者達に対してニトゥタ大尉から言いたいことがありますか。
ニトゥタ:彼らのことをとても尊敬しています。例えば、戦地に出ても重装備なしで戦うことはないです。でも若者達を見たら武器や防弾具なしで戦っています。そこまでして正義を求めていると言うのは相当の意思を持っているからです。彼等の精神の強さをとても感じます。もう少し耐え続けてください。正しい方が必ず勝ちます。
記者:いろいろな人がこのライブを視ていると思います。中では、軍評議会(注2)の人もいると思います。その人たちに対してニトゥタ大尉は軍人として何か話したいことがありますか。
ニトゥタ:私にとってアウンサン将軍は英雄です。1945年の軍の訓練終了式でアウンサン将軍は演説をしました。内容は、
・軍は武器を持って国民を虐めないこと
・軍は国民のしもべであること
・軍は国民の主人ではないこと
武器を持っている軍は国民を守ることを基本として心に留めておかなければならないのです。もし、選挙の不正が原因だとしても、武器を使う必要はないのです。人の命を奪ってまで解決する必要がないのです。まともな理由もない単なる訴えだと思います。この時期に国民の命まで奪うほど残虐になる必要はないのです。国軍の残虐な扱いに協力する人は全員共犯者だと思います。正義と不義の中、不義の側に立つことは不義の共犯者と同じです。
記者:今起きている軍事クーデターを非難するとはっきり言えますか。
ニトゥタ:私は軍事クーデターに絶対に賛成しません。非難します。国民を銃で撃つように命じたことを絶対許しません。
記者:ニトゥタ大尉が語ったように軍がCDMに参加するようになることを期待しています。ありがとうございました。
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以上、インタビューを翻訳
注1)CDMとは、Civil Disobedience Movement の略で、市民的不服従運動の意味。ミャンマーでは軍事クーデターに反対し、公務員などが職場放棄などを行う。
注2)軍評議会は、国軍がクーデター後に軍による行政を行うために発足させた「行政評議会」のこと。クーデターが起こした国軍が行政を行うこと自体が不法行為のため、ここでは軍評議会とした。
なお、翻訳で間違い等がありましたら、ご指摘ください。
https://www.facebook.com/mrattkthu/videos/1442752376074932/
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